Twitter Facebook
2022.03.04

【研究紹介】骨格筋のビタミンB1量の低下は安静時や運動中のグリコーゲン代謝に影響を与えない

いきいき放送局へようこそ!

本日は本学科でスポーツ栄養学等の授業を担当されている、
佐藤 晶子先生の研究をご紹介させていただきます!



みなさんはビタミンB1をご存知でしょうか?
ビタミンB1は、エネルギー代謝、特に糖質代謝において重要なピルビン酸脱水素酵素(PDH)の補酵素(酵素が作用するために不可欠な因子)として機能しています。
糖質は運動時の主要なエネルギー源であるため、ビタミンB1の不足は糖質からのエネルギー産生を抑制し、運動パフォーマンスに影響を及ぼすと考えられてきました。
















図1 骨格筋細胞の模式図



運動時に利用する糖質は、主に骨格筋中のグリコーゲンです。
そのため、骨格筋のビタミンB1量が減少すればグリコーゲン代謝にも影響することが懸念されますが、これまで分子レベルでの詳細な検討は行われていませんでした。

 

そこで、実験用動物にビタミンB1欠乏食(ビタミンB1を不足させた食事)を摂取させ、骨格筋のビタミンB1量が約半分まで低下したときの骨格筋グリコーゲン量を確認しました。
しかしながら、グリコーゲン量だけでなく、糖質に関わる代謝産物や、代謝に関わる因子もすべて変化しておらず、運動時でさえグリコーゲンは正常に代謝されることが確認され、これまでの概念を覆す結果となりました。


図2 骨格筋のビタミンB1量が低下したときの骨格筋グリコーゲン(左図)、血中乳酸値(中央図)、乳酸輸送体発現レベル(右図)

Rest:安静時 LIS:低強度持久水泳運動時 HIS:間欠的高強度水泳運動時

MCT4:乳酸輸送体

CON, C:コントロール群 TD, T:ビタミンB1欠乏食群

 

長期的なビタミンB1欠乏は食欲不振や脚気など重篤な欠乏症を引き起こしますので、欠乏症を予防するためにビタミンBを摂取することは重要ですが、今回の研究結果は、こうした欠乏症が見られないような軽度の、あるいは短期間の摂取制限なら、グリコーゲンをはじめとする糖質代謝や運動パフォーマンスには影響がないことを示唆するものです。
このことは、やみくもなサプリメント摂取を防ぐこと、また食事を提供する側としては献立作成に自由度の向上にもつながります。

 

論文情報

Akiko Sato, Shinji Sato, Go Omori, Keiichi Koshinaka.
Effects of Thiamin Restriction on Exercise-Associated Glycogen Metabolism and AMPK Activation Level in Skeletal Muscle.
Nutrients 2022;14:710.

 https://www.mdpi.com/2072-6643/14/3/710

 



佐藤 晶子先生の研究は、アスリートをはじめとした私たちの食事や栄養について、非常に重要なものですね!

私たちが行なっている研究では、必ずしも「今まで知られたいなかった新しいものの発見」ばかりだけではなく、今回の研究結果のように「従来の当たり前だと思われていたことを覆す発見」というのもあります!

「当たり前」だと考えられていることに「なぜ当たり前だと思われているのだろう?」という視点を持つことで、みなさんも新たな発見があるかもしれませんね!

今後も健康スポーツ学科の先生方の面白い研究を楽しみにしていてください!


健康スポーツ学科

Youtube

Twitter

Instagram

#専門的なお話し