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2022.09.30

【研究紹介】VRエクササイズは気分と認知機能をともに高める新たな運動処方となりうるか!?

皆さんこんにちは!
いきいき放送局へようこそ!

本日は、越智先生の研究が国際誌「JMIR Serious Games」に採択されましたので、ご紹介します!



皆さんは習慣的に運動をできていますでしょうか。

習慣的な身体活動には、生活習慣病予防や肥満の防止だけでなく、注意・集中、選択判断能力といった前頭前野の司る高次認知機能 (実行機能) を向上させるなど、
健康に対する様々な効果が知られています。

 

しかし、運動の習慣化は簡単ではなく、日本だけでなく世界的にも身体不活動化が社会問題となっています。

私たちはこの解決策として、仮想現実環境 (VR) を利用したエクササイズゲームに注目し、その効果について検証しました。

本研究では、10分間の1)ヘッドマウントディスプレイを用いて行うVR運動条件、2)平面画面の前で行う運動条件、3)椅子に座る安静条件の3条件が、認知機能に与える影響を検証しました。



図1.実験プロトコル
A) 10分間の運動か安静の前後に実行機能課題をパソコンで行い、気分を質問紙で回答させました。B) 安静条件では椅子に座って安静に、
C) 2D運動条件はモニターに表示される指示に合わせてボクシング運動を、D) VR運動条件ではヘッドマウントディスプレイ装着し、表示される指示に合わせてボクシング運動を行いました。


運動前後に気分指標と、実行機能指標であるカラーワードストループ課題を用い、反応時間と正答率から評価しました。
その結果、VR運動条件では運動条件、安静条件と比べ、運動後に「活気-活力」「覚醒度」「活性度」といった快気分指標の増加を引き起こしました。

 

カラーワードストループ課題成績には差は認められず、「覚醒度」の変化と反応時間の変化との間に正の相関関係が見られたことから、
VR運動後の覚醒度の過剰な増加が認知機能向上効果減弱を招く可能性が示されました。



図2.VR運動が気分指標に与える効果
A) 椅子に座っている安静条件、ディスプレイを見ながら運動を行う2D運動条件に比べ、ヘッドマウントディスプレイを装着して運動を行うVR運動条件では、
運動後の「活気-活力」項目の増加が認められました。B、C) 2D運動条件は安静条件に比べ覚醒度、活性度の増加が見られましたが、VR運動条件では2D条件よりも増加度が大きいことが示されました。
これらの結果から、VR運動は気分向上効果を有することがわかりました。





図3.カラーワードストループ課題成績
難しい試行と簡単な試行の反応時間の差であるストループ干渉は実行機能の指標です。ストループ干渉が短くなると、実行機能が向上したと言えます。
ストループ干渉は安静条件、2D運動条件、VR運動条件すべてにおいて、運動前後で変化は見られず、実行機能向上効果は確認されませんでした。


運動習慣化を促進するには、運動の持つ健康増進効果といった「価値」だけでなく、運動に対する前向きな印象「好意度」が重要とされています。
本研究から、VRと運動の併用は、運動単独に比べ、快気分を誘発することが明らかとなり、運動好意度を高める運動条件として、運動習慣化を促進する新たな運動プログラムとなる可能性を示唆します。

一方で、本研究ではVRエクササイズが実行機能向上効果を有するかは明らかにできませんでした。
今後、VRコンテンツと運動の最適な組み合わせの検証を進めることで、VRエクササイズのさらなる可能性を検証していく予定です。

皆さんどうでしたでしょうか?
VRエクササイズという新たな運動様式に着目した面白い研究ですね!

スポーツ科学を学びたい高校生の皆さんは、ぜひ新潟医療福祉大学の健康スポーツ学科に!
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