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本日は、佐藤大輔教授の研究論文が国際誌Behavioral Brain Research(オランダ)に掲載されましたので、その研究を紹介します!
この研究では「人はなぜ泳げるのか?泳げるようになるとはどういうことか?」という疑問を明らかにするため、泳げる人(水泳選手)は、水の中でも陸上と同じように自分自身の身体の位置を理解できており(身体位置覚)、そのことが「華麗な泳ぎ」を生み出していることが分かりました.
これまで、水泳選手を対象に動きや、呼吸・エネルギー代謝、水の流れを調べる研究が行われてきました.しかし、「なぜ、泳げるのか?」という本質的な疑問を解決することはできていませんでした.
『水泳選手の身体知』を明らかにすることができれば、新たな視点での水泳教育も進むと考えました.
そこで、わたしたちの研究グループでは、様々な環境で身体位置覚を調べることのできる機器を作成し、水泳選手が華麗に泳ぐことのできる理由を調べました.
図2.身体位置覚を計測する課題
指示された角度に手首を曲げ、どの程度正確に曲げることができるかを計測します.
合計で30回実施し、指示された角度とのズレの平均値から身体位置覚を評価しました.
図3.2連発経頭蓋磁気刺激法
八の字型の刺激コイルを一次運動野に当て、脳を外部から刺激します.脳を刺激すると、対応する筋において、右図のような反応がみられます.
一発刺激をした場合と、二発刺激をした場合を比べると、二発刺激をした場合の方が、反応が小さい(抑制されている)ことが分かります.この抑制の程度によって、抑制性の神経活動を評価することができます.
水泳選手では、水の中に手を浸けると、抑制性の神経活動が高まる一方で、非水泳選手では、抑制性の神経活動が弱まるといった全く逆の反応を示すことが分かりました.
これは、水泳選手が、本来であれば水に入ることで弱まる抑制性の神経活動を、強化させることで、正確な身体位置覚を実現している可能性を示しています.
これらの結果から、水泳選手の華麗な泳ぎには、水の中でも一次運動野の抑制機能を強化し、自分自身の身体の位置を理解することが関係している可能性があります.
泳げるようになるカギは、水の中でも陸上環境と同じように、「自分の身体位置を把握すること」にあると考えています.
本来、水泳選手や泳げるようになりたい人は、水の中でトレーニングをすることで水泳の技術を身に付けていきますが、中にはトレーニングを繰り返しても上手にできない人や、泳ぐことが怖い人もいます.
本研究で用いた、「身体位置覚を計測する課題」を応用し、水泳教育の現場や水泳指導のプログラムとして取り入れていくことで、上述の問題点を解決し、効率的に「速く泳ぐ」「泳げるようになる」といった目標を達成することができるかもしれません.
大学HPにて、この研究の詳細を示しています。
新潟医療福祉大学の特徴は、多くのトップアスリートが在籍していると同時に、トップレベルの研究者が数多くおり、そんな環境の中で学ぶことができます。
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