変形性膝関節症の研究(1つの手法にこだわらない事、楽しくやる事の大切さ)
大森 豪
変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:膝OA)は膝関節の経年的変化(老化現象とも言います)であり、現在、日本には本症と診断される人が約2,500万人いると推定されています。私は、整形外科医として膝OAに興味を持ち自身のライフワークとして研究を行ってきましたが、そのゴールは臨床の現場に役立たせることです。
臨床医学の分野では、この目的を達成するために4つのステップをクリアしながら研究を進める手法が良く使われます。私の膝OAの研究では
①現状把握と発生頻度調査:疫学手法
新潟県十日町市松代地区で1979年以降継続して行っている住民検診(松代膝検診)。
膝OAの有病率や自然経過、発症・進行のリスクファクターを解明。
②病態メカニズムの解明・関連因子の抽出:生体工学手法
リスクファクターのうち歩行時の膝の横ぶれ現象(スラスト減少)に注目。
多方向カメラを用いた歩行運動解析によりスラスト現象を解明し膝関節への荷重負荷を解析。
③治療・予防法の確立
スラストを改善させる方法として以下の内容に取り組んできました。
・膝内反(凹脚)の矯正
⇒歩行シューズ・歩行タイツの開発、高位脛骨骨切り術(手術)
・大腿四頭筋力低下予防
⇒筋力訓練装置(ロコモスキャン)の開発、筋力訓練の指導パンフレット作成
④臨床への介入と効果の検証
従来から行われている高位脛骨骨切り術については、手術後スラストが消失又は軽減し、
臨床成績と関連性がある事が証明できました。また、開発したシューズやタイツの効果、
の効果については今後検証を進める予定です。
このように、研究を進めるためには1つの手法で十分な場合もありますが、複数の研究手法が必要になる時もあります。幸い、健康スポーツ学科には多種多彩な研究者がおられます。行き詰まった時は周りの先生に相談することをお勧めします。そして、何より強い志を持って明るく楽しくポジティブに研究することが大切です。
― ― ― ― ― ― ― ―
以下、セミナーの様子です。
セミナーの様子
市川浩先生(クリック)(写真左)から質問がありました。
セミナー後、山代幸哉先生(クリック)からも質問を受けていました。
健康スポーツ学科
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/