おとといから始まった体力医学会参加報告。
今日は中野沙紀さん(修士課程2年)です。
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【背景】
認知トレーニングが認知機能を改善するか否かについて、一致した見解が得られていない。そこで、認知トレーニングのプレコンディショニングとして、空間記憶機能と関連するα、β帯域の活動を高めるとされる中等度有酸素性運動が有用であると考えた。
【目的】
リカンベントエルゴメーターを用いた運動が、α、β帯域の活動を増大させ、空間記憶トレーニングのプレコンディショニングとして有用となるかを明らかにすること。
【方法】
実験1:
健常成人15名を対象に運動条件と安静条件の2試技を実施し、介入前後、10、15、30分後に脳波の計測を行った。
実験2:
健常成人30名を運動群、安静群各15名とし、介入後に約2分間の空間記憶課題10セットをトレーニングとして行い、トレーニング15、30、45、60分後、1日後に再度同課題を行った。
実験1,2共に運動は50%Vo2peakで20分間のペダリング運動とした。覚醒度の評価も同時に行った。
【結果】
実験1:運動後10分まで、α、β活動の増大が認められた。実験2:運動条件においてトレーニング効果の促進が認められた。運動後に覚醒度の上昇が見られた。
【結論】
中等度有酸素性運動が空間記憶トレーニングの効果を促進させた。
これには、運動後のαおよびβ活動の増大、覚醒度の上昇が関与している可能性が示唆された。
私は、今回の体力医学会で、初めて自身の研究内容を発表する機会をいただきました。
今までの学会は、口頭発表やポスター発表を聞くだけの参加でしたが、今回は、自分が取り組んできた研究を発表する立場での参加となり、貴重な経験ができました。
その中で専門分野が異なる方に研究内容を解りやすく伝えるのは難しいことであると感じました。
私が行っている研究は、簡単に言えば、「運動が認知症予防に効果的か否か」を証明する内容であり、高齢化が進む現在、認知症の患者さんや、軽度認知障害を有する方を少しでも減らしていくことを目標とした研究となります。
今後、認知症予防における「運動」の効果をできるだけ多くの方に理解してもらうためにも、自身の研究内容について更に理解を深めていく必要があると感じました。
口頭発表、ポスター発表を聞くだけでなく、シンポジウムに参加することで、現在取り組んでいる運動指導や運動と脳について、それぞれの専門の方からの詳しいお話を聞くことができ、新たな知見を取り入れることができました。
3日間で聞いたり、見たり、感じたりしたことを、今後にしっかりと活かしていきたいと思います!!
中野沙紀さん(修士課程2年)
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中野さんはメディカルフィットネス施設への就職を希望しています。
彼女は健康運動指導士の資格も保持しているんですよ!!
資格を保持すること自体には一定の意味があるでしょう。
しかし、ただ資格を保持しているだけでは、より良い健康運動指導士とはいえないのではないでしょうか。
中野さんは大学院に進学し、「研究」を通して重要な情報を取捨選択する能力、論理的思考力、高度な実技能力を身につけました。
まず、私たちはこのような能力を身につけることができます。
「大学院」という研究をする場所ではそれらが必ず必要になるからです。
つまり、大学院に進学し、真剣に自身の研究と向き合うことによって、このような能力が身につきます。
次に、私たちはこのような能力を失いもします。
いくら大学院で身につけた能力とはいえ、常にアンテナを張って最新の情報を得ようとしたり、目の前の対象者に対して最善の運動処方を常に考えることをしたりしなければ、これらの能力は徐々に失われていきます。
だから、中野さんにはせっかく身につけた能力を失うことなく、より洗練させてもらいたいと思います。
大学院を終了後、中野さんは高度な職業人として社会に貢献してくれるはずです。
大学院を狩猟するまで、まだ時間はあります。
少しでも良い論文となるように、ギリギリまで自身の研究と向き合ってもらいたいですね。
新潟医療福祉大学 健康スポーツ学分野
https://www.nuhw.ac.jp/grad/field/master/hs.html
健康スポーツ学科
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/