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2023.01.31

【研究紹介】ストレスによって生じる過呼吸(過換気)の生理的意義は?

皆さんこんにちは!
いきいき放送局へようこそ!

本日は、健康スポーツ学科の藤本 知臣先生の研究が国際誌「American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology」に採択されましたので、研究内容についてご紹介します!


私たちヒトは、恐怖や痛み、急激な温度変化などの外的ストレスにさらされると、過呼吸(過換気)を引き起こすことがあります。

これまでの研究では、この「過換気」の生理学的意義(なぜ起こるのか?)について、
外的ストレスを軽減させることが意義の1つとして考えられてきましたが、そのメカニズムについては不明な点が残されていました。
過換気が起きると、体内の二酸化炭素(CO2)が必要以上に排出され、脳への血流供給が弱まる低二酸化炭素血症に陥ることがあります。
そこで、本研究では過換気によって生じる体内のCO2濃度の変化が外的ストレスの1つである皮膚の温度変化に対する感覚に及ぼす影響について検討しました。


図1.外的ストレスによって生じる過換気
恐怖や痛み、急激な温度変化などは過換気を引き起こします。必要量を超える換気が行われることで、体内の二酸化炭素が過剰に排出されます。


本研究は、15人の若年成人(男性12人、女性3人、26±3歳)を対象とし、前腕部と前額部において皮膚温度感覚を測定しました。
実験では、通常の呼吸時 (Control条件) の測定を行った後、過換気によって体内のCO2濃度を低下させた場合 (HH条件) と過換気を行いながらCO2を吸入することで体内のCO2濃度を維持した場合 (NH条件) のそれぞれについて測定を行いました。


その結果、皮膚温度感覚は体内のCO2濃度が低下した場合にのみ鈍くなり、より大きな温度変化が生じなければ温かさや冷たさを感じなくなりました。
その一方で、過換気中に体内のCO2濃度を維持した場合の皮膚温度感覚は、通常呼吸時と差がみられませんでした(図2)。


図2.各条件における皮膚温度感覚
温かさや冷たさを感じるのに要する温度変化は、過換気によって体内のCO2濃度が低下した場合 (HH条件) において大きくなり、温度感覚が鈍くなった。
一方、過換気を行いながらCO2を吸入することで体内のCO2濃度を維持した場合 (NH条件) には、通常呼吸 (Control条件) と差はみられなかった。
*: p<0.05条件


これらの結果から、過換気による皮膚感覚の鈍化には、過換気自体ではなく、過換気による体内のCO2濃度の低下が関連していると考えられました。
皮膚温度感覚の鈍化は、行動性の体温調節反応の減弱につながります。夏の暑熱下での生活・運動や冬の水難事故など、大きな体温変化によって起こる過換気は「暑い」や「寒い」といった感覚を鈍らせ、熱中症や低体温症体温発生を助長している可能性があります。

今後は、過換気による体内のCO2濃度の低下と皮膚刺激時の神経活動などを検討していくことで、より詳細なメカニズムの解明につながると考えられます。

【論文情報】
著者: Fujimoto T, Dobashi K, Fujii N, Matsutake R, Nishiyasu T. 
タイトル: Hypocapnia attenuates local skin thermal perception to innocuous warm and cool stimuli in normothermic resting humans.(低二酸化炭素血症が温感や冷感に対する温度感覚を弱める)
掲載誌: American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
doi: https://doi.org/10.1152/ajpregu.00126.2022


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